ハッチサウンド工房さんによるB-3 & Leslie 122RVオーバーホール
 


  成毛滋さんから譲っていただいた1974年製のC-3と122RVですが、ご本人が体を壊してからは弾くこともあまりなかったそうで、いろいろと調子の悪いところがありました。
  大切なものなので、自分で修理するのはあきらめて、ハッチサウンド工房の山本さんに来ていただき、全体的に見てもらいました。

  大きな問題は、
(1) STARTモータが回らない。
(2) ビブラートスキャナが回らない。
(3) 音量が著しく下がり、同時に低音が出なくなるときがある。
というもので、かなり重症であります。

  STARTモータが回らないのに、どうやって(2)や(3)の問題がわかるのかと不思議に思う方もいると思うので、先に種明かしをしておきます。
  C-3は60Hz仕様なのですが、サイクルチェンジ用のモータが付いており、そのモータのトルクがあるため、いきなりRUNモータのスイッチを入れてもRUNモータだけで回転を始めます。そのため、実際にはSTARTモータがなくても音が鳴るということでした。
  ちなみに、このモータは、L-100などで使用されているのと同じ水色のモータです。
  また、本来のRUNモータも付いていますが、配線が接続されていないため、空回りしているだけです。ですので、電源は50Hzですが、Trek IIのサイクルチェンジャーは、付いていません。
 


張り付いてしまったビブラートスキャナー

ビブラートスキャナーは、写真の真ん中の歯車の後ろ側にあります。
拡大したのが下の写真ですが、このままの状態で修理することは不可能です。
ちなみに歯車の左にある四角い部分がサイクルチェンジャー機能を
持ったモータです。
 

ということで、二つのRUNモータとスキャナーを外します。
 


外した本来のRUNモータとビブラートスキャナーです。
これからビブラートスキャナーを開けます。
 


これが開けた状態です。
張り付きの原因は軸の部分に多量のオイルが注された後に
あまり弾かなかったために劣化してグリス状になり軸を止めていた
ためでした。
 


RUNモータ、スキャナーを外したところ。
Tone Wheelが残っているところがミソです。
Tone Wheelを取り出すとそれだけで1日仕事だそうです。
でも1日なんですね。すばらしい。
また、電源を入れると時々、ポンという音がしました。
RUNモータがしっかりアースされていないために電荷が
たまるのが原因ということでジャンパー線を飛ばしてアースを
強化しました。
 


音量が著しく下がり、同時に低音が出なくなる。

この症状は、再現するときとしないときがあり、症状が出ても
すぐに消えてしまうときもあり、かなりセンシティブです。
配線をすべて当たってもらいましたが、特に半田不良の箇所もなく
結論としては、プリアンプ部にハモンドヘアが付いていて
ショートしていたというものでした。
アンプの中のハモンドヘアをすべて取り去りました。
 


イクスプレッションペダルのがたつきと軋み



エクスプレッションペダルが少し硬いのと、軋みがありますので、
調整していただきました。軋みに付いては、パッキンを入れることで
問題解決です。
 


ドローバーの接触不良と断線

ドローバーの接触不良と断線があったので接点復活剤と
半田付けで修理してもらいました。
この症状は、良くあるものです。
 


Leslieプリアンプの調整

12AX7が少しへたっているそうで、スピード切り替え用のリレーを
ドライブしているものと交換しました。ちなみに、今付いている真空管は、
購入当時のオリジナルの真空管が付いています。
ちなみにレスリーアンプの検査は、発信機から正弦波を入力して
シンクロで確認するというフルコースでした。
 


Leslieの軋み音

トレブルロータの軋みはをベアリングの磨耗によるもので、
ベアリングを交換しました。アセンブリ全体の交換ではなく
ベアリングだけの交換です。頭が下がります。
 


接点不良が解消されたドローバー
 


STARTモータが回らない

STARTモータが回らない原因は二つありました。
ひとつは、STARTモータ自体のオイルによる張り付きです。
これもTone Wheelをキャビネットから外さずに修理してもらいました。
これは、スキャナーと同じ原因で、オイルが劣化してグリス状になり、
軸を止めていたためでした。
もうひとつの原因は、スイッチ部分の半田はがれでした。
 

 


  ハッチサウンド工房さんだけではなく、ハモンドのエンジニア、ほぼ全員にいえることですが、オリジナルの部品をとても大事にしてくれます。もうオリジナルの部品は手に入らないですが、手間からいったら交換してしまったほうが簡単で、修理代も高く取れると思います。でも、オリジナルの部品を修理して使うという、今の世の中では忘れ去られてしまったことを丁寧にやってくれます。
  また、経験豊富な方が多いので、回路図を見ただけではわからない問題もほとんど解決してもらえますし、なんといってもすばらしいのは、理解できる知識のある人にはちゃんとした問題の原因 と対処方法を説明した上で修理をしてくれますので、納得して修理やメンテナンスをお願いできる点です。
  ハッチサウンド工房さんに修理をお願いしたい方は、高木庵まで連絡していただければ、連絡先をお知らせしますが、直し方だけ聞いて自分で治すのは却下です。
  ハッチサウンド工房さんにとって、修理は、収入源ですので、アドバイスだけもらうというのはご遠慮ください。
 

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